シャトー案内

Ch Gruaud Larose
シャトー・グリュオー・ラローズ
生産地 | メドック地区 サンジュリアン |
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シャトー | シャトー・グリュオー・ラローズ |
タイプ | 赤/フルボディ/エレガントでバランスが良いワイン |
格付け | メドック2級 |
栽培品種 | カベルネ・ソーヴィ二ヨン60%、メルロー30%、カベルネ・フラン5.5%、プティ・ヴェルド 3%、マルベック1.5% |
各ワイン評論家からの評価(★1点/☆0.5点)
ロバート・パーカー (第4版) | ★★★★(4点/4点満点中) |
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ヒュージョンソン (第5版) | ★★★ (3点/4点満点中) |
ル・クラスモン (2006年度版) | ★★(2点/3点満点中) |
ゴー・ミヨー (2006年度版) | ★★★★☆(4.5点/5点満点中) |
17世紀中頃イギリスで、【オー・ブリオン】が初めてシャトーの名を冠して販売され人気を博したのを機に、グリュオー神父がワインを造りだしたのが、このシャトー・グリュオー・ラローズの始まりでした。1855年の格付けで2級とされるずっと以前から、素晴らしいワインを造るシャトーとして広く知られていました。
サンジュリアン村の中でも、ジロンド川から離れた内陸側の丘の上にある畑は、2級シャトーの中でも最大級の広さを誇ります。この畑の長所は、高い海抜のため砂利の層が厚く水はけが良いことと、風化や土地の隆起の影響で土壌の構成がとても多彩になっていること。そんな優れた土地に、平均樹齢43年を誇る立派なブドウの樹が植えられてます。
畑には、上空で雹(ひょう)の発生を防止する機械を設置してあったり、200万ユーロもの大金を投じて、光合成促進のために樹を10cm高くする改良が行われたり、醸造工程にも様々な技術が取り入れて積極的な改革を続けています。
ワインは、程よくスパイシーで野生的なニュアンスを感じる香りと、凝縮した果実味に定評があり、一貫して高い品質を維持しています。
また、“サンジュリアンで最も重々しい”と評されるほど、逞しいタンニンを持つので、まさにヴィンテージワインがオススメです。秀逸な年の多い80年代のワインは、今まさに飲み頃を迎えています。偉大な年には1級相当の品質となり、50年の熟成にも耐えるワインなだけに、いい年のものであれば70年代の物でも十分飲み頃として楽しめることでしょう。
シャトー紹介・醸造工程
創設者はグリュオー神父
- グリュオー・ラローズのシャトー全景
1660年頃、【オー・ブリオン】のワインが、イギリスにおいて“ニューフレンチクラレット”と呼ばれて人気を博した時期がありました。一つの均質な原産地を起源とする、それまでには無かったタイプのワインとして受け入れられたのです。それを発端に様々な新参者が現れましたが、グリュオー神父もその一人でした。サンジュリアン村に70ヘクタールの土地を手に入れて、シャトー・グリュオー・ラローズの基礎を作りました。
早い時期からすでに素晴らしいワインを造り出すシャトーとして知られていて、後継者たちもみな厳格な方針を貫き、シャトーの名声を守っていきます。19世紀初めには後継者問題から2つに分割されてしまいましたが(1855年の格付けではどちらも2級でした)、1935年、ようやく再統合を果たして、かつての姿を取り戻しています。
「200万ユーロ」をかけて畑を改良
- シャトーの上から見たブドウ畑
D2号線を北上して、【ベイシュヴェル】、【ブラネール・デュクリュ】といったシャトーを通り過ぎると、右手にいつも様々な国の国旗をなびかせている【デュクリュ・ボーカイユー】のシャトーが見え、さらに正面には4級シャトー【サン・ピエール】の綺麗なシャトーが突然現れます。
それを目印として、そこからD2号線を離れて、サンジュリアン村の西側に入っていくと、グリュオー・ラローズのシャトーが見えてきます。
グリュオー・ラローズは、合計「82ヘクタール」のブドウ畑を所有しています。最も高いところで「海抜約28メートル」と、サンジュリアンでは最も高い「Plateau d’elite(プラトー・デリット)」と呼ばれる平坦な丘の上にあります。このプラトーは、風化などによって表土が薄いところがあったり、土地の隆起のため下層の構成が異なっていたりと、すぐ隣であっても土壌の性格が微妙に異なるという、非常に多彩な畑なのだそうです。
また、海抜が高いということはそれだけ砂利が多く、堆積する砂礫質の表土が多く残っていることになります(海抜が低いところは風化して削られてしまうため)。このため、非常に水はけが良く、ブドウ栽培には適した土壌となるのです。
その畑には、現在60%のカベルネ・ソーヴィニヨン、30%のメルロー、5.5%のカベルネ・フラン、3%のプティ・ヴェルド、1.5%のマルベックと、なんと5種類のブドウが植えられています。また、平均樹齢も約43年と高く、植樹密度も1ヘクタール当たり8,500本から、新苗では10,000本の植樹密度となっています。
2005年からは、さらに光合成を促進させるために、ブドウの樹を10センチ高くする“パリサージュ(ブドウの樹の嵩上げ)”という手法を実施しました。その作業には、何と200万ユーロもの経費がかかったのだとか。また、1997年からは、殺虫剤を一切使用していない“リュット・レゾネ(減農薬農法)”を実践しています。
さらに興味深いのは、畑の中にある雹を発生させない装置でしょう。実を潰したり、ブドウの幹を裂いたりと、雹はブドウ畑に何かと被害を与えるものです。しかし、雹が降りそうだと判断した場合、この機械から音波による衝撃波を出して、上空で雷雲や雹を散らしてしまうのだとか。他のどのシャトーにも先駆けて1993年に設置、1996年から使用されているそうです。
- 「パリッサージュ」を行ったため、真新しい木に針金が備えられています
- 正面の背の高いものは天候観測用のレーダー。これで収穫時期などの予測をします
- これが雹対策のための装置です
様々な技術を積極的に取り入れる
ブドウの収穫は全て手摘みで行われ、ブドウ畑に移動式の選果台を設置して、選果が行われます。トラクターに載せて醸造所までブドウが運ばれると、1993年に以前のオーナーであったアルカテル社が使用を始めた選果台にて、改めて選果が行われます。
その後、ポンプを使用して、14基のフレンチオーク製タンクと29基のコンクリートタンク(内側はエポキシ樹脂加工されています)に移され、そこで約2日間、10℃で低温マセレーションを行います。
全体の約40%がオーク製タンク、残りがステンレスタンクという比率となっていますが、樹齢の高い区画を優先的にオーク製のタンクで発酵を行うのだそうです。アルコール発酵、果皮浸漬は、合計25~35日間、31~33℃と高い温度で行います。
発酵中と浸漬中には、“マスト(ワインになる前の果汁のこと)”を循環させて色素、タンニンの抽出を図る「ルモンタージュ」、炭酸ガスのために上に持ち上げられてしまった粕帽をマストに漬け込む「ピジャージュ」、そしてヴィンテージによっては発酵中にワインを一旦引き抜き、別なタンクに移し変えて、粕帽を空気に触れ合わせる「デレスタージュ」なども行っているそうです。
- 据え置き型の選果台。ここでは2回目の選果を行います
- 選果後、このステンレスパイプからブドウの粒がタンクへと運ばれていきます
- 空気圧式圧搾機。中のバルーンが膨らんで粕を絞る仕組みです
樽は合計で「12社」から仕入れ
- 14基あるフレンチオーク製のタンク
- 29基のコンクリートタンク。内側はエポキシ樹脂加工されています
アルコール発酵が終了した後は、果皮浸漬中には「バトナージュ」を行います。このバトナージュは樽で行うものとは少し異なり、上部に分離してしまった粕帽の一番下のマストに接触している部分を専用の器具で攪拌します。こうすることによって、よりワインにコクを出すのだそうです。
2005年のヴィンテージからは、実験的に、最初の6ヵ月間のみバトナージュを行いながらの「シュール・リー熟成」を一部の樽に行っています。しかし、大部分は伝統的に3ヵ月ごとの澱引きを行いながら16~18ヵ月間の熟成を行います。
果皮浸漬の終了後、ワインの引抜を行い、約45~50%は新樽、残りはタンクの中でマロラクティック発酵を行います。これはタンニンの量を測って、多いものをなるべく新樽の中で行っているそうです。ワインにフルーティーさを残すため、敢えて新樽比率は抑え気味にしています。この比率によって、樽で行うマロラクティック発酵の比率も変えていくのです。
使用する樽は、何と合計で「12社」から仕入れているそうです。焼付けはミディアムで、全てフレンチオーク、特に“エクストラファン”という木目の細かいものを使用しています。
最初の6ヵ月間は、地上階にある樽貯蔵室で品種ごとに分けて熟成した後に、ブレンドを行います。ブレンド終了後はまた樽に戻して、地下にある樽貯蔵室にて残りの熟成を続けていきます。
熟成が終了すると、自社製の瓶詰め機械で瓶詰めを行い、いよいよ出荷となります。
- 最初の6ヵ月間、地上階にある部屋で熟成を行います
- 6ヵ月後、地下にある樽貯蔵室へと移されて、さらに熟成を続けていきます
- 自社製の瓶詰めの機械
ジロンド川からの恩恵は少ないが
- 古いヴィンテージ用のカーブ。最も古くは1815年、格付けの年である1855年のものまでありました
グリュオー・ラローズのシャトーは【デュクリュ・ボーカイユー】や【レオヴィル・ラスカーズ】といった、同じアペラシヨン内の2級シャトーと比較すると、より内陸側に位置し、ジロンド川から少し離れています。
川に近ければ近いほど、沢山の砂利が堆積しています。また、春には川から温暖な空気が流れ込むため霜の害を避けれたり、夏場に気温が上がりすぎた時でも、川からの冷たい空気のおかげでブドウが熱くなりすぎないなど、様々な恩恵が受けられるのです。
グリュオー・ラローズは、ジロンド川からの恩恵という点では、周囲のシャトーよりも少ないかもしれませんが、その反面、「畑の多彩さ」「海抜の高さ」といった、他には無い利点があるのです。一見、畑の環境は今ひとつに見えてしまうかもしれませんが、2級に格付けされているという実力は間違いないといえるでしょう。
シャトーの歴史
“ニューフレンチクラレット”の頃に
1660年頃、【オー・ブリオン】のワインがイギリスにおいて“ニューフレンチクラレット”と呼ばれて人気を博したことを発端に、一つの均質な原産地を起源とする新しいタイプのワインが生まれた。
その成功を目の当たりにしたボルドーのブルジョワ達は、当時ライ麦しか栽培できなかった酸性の土地であるメドック地区に目を向ける。この痩せた土地が、良いワインを作るためのブドウに適しているということが分かったのだ。
そうした新参者に交じって、グリュオー神父はサンジュリアン村に70ヘクタールの土地を手に入れ、ワイン造りを開始する。1742年、著名なワイン商であったアブラハム・ロートンが、すでにこのワインの熟成の素晴らしさについて言及している。当時はまだ、現在のグリュオー・ラローズという名前ではなかった。グリュオー・ラローズの名前が使われはじめたのは1781年、ワインが取引がされるようになってから50年以上も経ってからのことだった。
分割、そして再統合
その後、グリュオー神父の甥の騎士ラローズが後を継ぎ、シャトーの名声を保つために厳格な方針を堅持した。1795年に彼が死去すると後継者問題が発生し、1812年になってようやくワイン商のサルジェ・バルゲリー社が買い取った。しかし、共同経営者間の揉め事によって、所有地は「グリュオー・ラローズ・サルジェ」と「グリュオー・ラローズ・フォール」の2つに分割されてしまった。
しかし、ワインの品質は厳格に管理されていたため、有名な1855年の格付けでは、どちらも2級に格付けされている。
1917年から一方のシャトーを所有していたコルディエ家は、長年2つの土地の再統合を願っており、1935年にようやくもう一方のグリュオーを買い取り、再統合がなされた。彼の死後、息子のジャンが跡を継いだが、金融グループのスエズ社などの所有者を経て、1997年からはワイン界で有名なベルナール・タイヤン社が所有者となっている。
シャトーデータ
主要データ
- Ch Gruaud Larose
シャトー・グリュオー・ラローズ BP 6, 33250 Saint-Julien-Beychevelle - http://www.gruaud-larose.com/
- 格付け
- メドック2級
- アペラシヨン
- Saint-Julien
- 総責任者
- Jean Merlaut

畑について
畑面積 | 82ha |
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年間平均生産量 | 約25万本 |
作付け割合 | カベルネ・ソーヴィ二ヨン 60% メルロー 30% カベルネ・フラン 5.5% プティ・ヴェルド 3% マルベック 1.5% |
平均樹齢 | 約43年 |
植樹密度 | 約8,500本/1ha |
醸造ついて
タンクの種類 | 木製タンクとコンクリートタンク |
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樽熟成の期間 | 約16~18ヵ月 |
新樽比率 | 約45~50%の新樽 |