シャトー案内

Ch Petrus
シャトー・ペトリュス
生産地 | ポムロール地区 |
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シャトー | シャトー・ペトリュス |
タイプ | フルボディ/肉厚な長期熟成型 |
格付け | なし |
栽培品種 | メルロー95%、カベルネ・フラン5% |
各ワイン評論家からの評価(★1点/☆0.5点)
ロバート・パーカー (第4版) | ★★★★(4点/4点満点中) |
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ヒュージョンソン (第5版) | ★★★★(4点/4点満点中) |
ル・クラスモン (2006年度版) | ★★★(3点/3点満点中) |
ゴー・ミヨー (2006年度版) | ★★★★★(5点/5点満点中) |
今や五大シャトーをも凌いで、世界で最も高値で取引されるワインの一つとなった「ポムロールの王」シャトー・ペトリュス。2006年のボルドープリムール(先物取引)でつけられた2005年ペトリュスの価格は、何と1本34万円。プリムール史上最高値を記録しました。ワイン愛好家であれば、天国への鍵を手にした聖ペテロのラベルを見るだけでも興奮してしまう、それほど希少価値のある幻のワインなのです。
ペトリュスのサクセス・ストーリーは1889年、パリ博覧会で金賞に輝いたことから始りました。その名声が世界に広がるようになったのは、マダム・ルーバが単独オーナーになった20世紀半ばから。彼女の尽力によりこのワインは脚光を浴びはじめ、やがてアメリカのケネディー、ロックフェラーといった名門ファミリーからも愛される、上流社会のステータスシンボルになっていきました。
格付けもない右岸の無名ワインが、わずか100年の間に、歴史ある五大シャトーを凌いで最高価格のワインになるということは、まさに奇跡と言えることでしょう。
“ポムロールの丘”の最上部にあるこの畑の土壌は、黒粘土という膨潤性のある特殊な粘土が表土に出ている珍しいもので、これこそがワインの決め手。メルロー種と絶妙の相性を見せ、肉厚でまろやかなワインを作り出していくのです。
そのワインは、熟成させるほどに、トリュフや湿った土を思わせる官能的な香りをグングンと増していき、複雑な風味と微妙なニュアンスを持つようになります。しかも素晴らしい果実の濃縮感は、時を経ても失われることなく、まるでジャムのような粘り気と圧倒されるような力強い存在感は驚くべきもの。口の中にすーっと流れ込んでくる滑らかな口当たりがこの上なく心地良く感じられるのです。
一般的には“メルローは柔らかい”と言われていますが、このワインに限っては最低でも10年、いい年のものは20~30年の熟成が必要でしょう。さすがに価格は高くなりますが、せっかく高価な買い物をするのであればぜひ当たり年のものをお選びください。あまりのスケールの大きさに、まさに天に昇ったかのような心地になれることでしょう。星の数ほどのワインを飲んできた愛好家でも、口を揃えて「その強烈な印象は忘れられない」というほどのものなのです。
ワイン愛好家ならば誰もが一度は飲んでみたいと思う、非常に希少なオールドヴィンテージのペトリュス、この機会にぜひお試しください。
シャトー紹介・醸造工程
“ペトリュスの粘土”が露出する土壌
- ペトリュスの醸造所。奥にポムロールの教会が見えます。教会周辺にも良いシャトーが集まっており、この一帯がポムロールで最良の土地です
【ヴュー・シャトー・セルタン】、【レヴァンジル】、【ラ・コンセイヤント】、【ガザン】と言った有名シャトーが密集するポムロール北東部。その頂点に立っているのが、有名なシャトー・ペトリュスです。
この有名シャトーが所有している「11.5ha」のブドウ畑は、周りにあるシャトーと畑が隣接しているにも関わらず、その境界線付近以外では、土壌は少し異なっています。ペトリュスの畑は、基本的に周りのシャトーよりも砂利が少なく、“黒粘土”と呼ばれる「スメクタイト」が多く含まれた、膨潤性のある特殊な粘土が表土に出てくるのです。
ブノワ・フランス出版社の『テロワール・アトラス』にはこのように記載されています。
台地の頂部にはほとんど礫質の覆いがなく、“ペトリュスの粘土”が露出している。このテロワールが生むワインの特に際立った酒質は、ブドウ果を非常にうまく成熟させる特殊な表土の水分機能によって説明できるだろう。水分をしっかり留めておくことのできる粘土の細かい組成のために、水分量は構成物質の真ん中ではわずかなままである。ブドウ樹の根は夏のあいだ粘土の干裂に入り込み、乾燥のひどさに対してますます表土を利用している。
雨水の後は、粘土の膨張によって表土は全体的に不透過性になる。この機能は、深部の地層の組織の間に見られる枝根の多さによって明白である。しかし枝根のほとんどはぺしゃんこにされたり、ヘリンボーンのかたちにつぶされて壊死してしまう。支根は冬のあいだに枯れ、夏には新たに成長する。
このようにして、ポムロールの栽培地の水分供給は決して過度になることも不足することもないのである。
この特殊な土壌が、ペトリュスが際立ったワインを生み出し続けている、一つの大きな理由なのでしょう。
- 醸造所を正面から
- 醸造所の入り口です
- ペトリュスの畑。醸造所周辺に広がっています
- 他の土地よりも砂利は少なめですが、全く無い訳ではありません
- ペトリュスの畑の中でも最も海抜が高い(約40m)ところ。ここは一見して粘土が多いのが分かります
- サンテミリオンのプラトーと比べると比較的平坦ですが、ペトリュスの畑もこのように傾斜しています
独特の手法をいち早く取り入れて
シャトー・ペトリュスで有名なのが、「グリーンハーベスト」と呼ばれる色が変わる前のブドウ果の間引きと、夏場に行うブドウの房周りの摘葉でしょう。これは1973年に最初に行われた際には2haだけだったそうですが、【ムートン・ロートシルト】と並んで、この地域では一番最初に導入したのだそうです。
ブドウの収穫は、約180人の手によって2日間で行われます。午前中はブドウに水滴がついていることもあるため、それらが乾く午後のみに収穫が行われます。収穫されたブドウ果は、その後カジェットに入れられて醸造所まで運ばれて、除梗前と除梗後の2回の選果が24人のスタッフによって行われます。
発酵は、1969年から使用されているセメントタンクの中で行われます。全て自然酵母のみで行い、温度は最大で約30℃。果皮浸漬と合わせて合計2~3週間続きます。
その後、タンクの中でマロラクティック発酵を行い、終了後、約50~100%の新樽に移して熟成を行っていきます。樽は全てライトで焼付けられており、合計4社から購入しているとのこと。
澱引きも、伝統的な3ヶ月に1回のペースで、コラージュも卵白で行っています。濾過は一切せずに、自社製の瓶詰めの機械で瓶詰めが行われ、出荷されていきます。
- ペトリュスの畑から見たガザン
- 畑の最も高いところから見たレヴァンジル。南東部分にあります
- レヴァンジルの南側、ペトリュスから南東部分にあるラ・コンセイヤント
ユニークなエピソードの数々も
- 聖ペテロの石像。ラベルにあるように天国への扉の鍵を持っています。ガラリアの漁夫であったため、船に乗っています
シャトー・ペトリュスの偉大さとは、醸造もさることながら、その所有するブドウ畑とブドウの管理によるところが大きいと思われます。
1984年には収穫直前に雨が降ってしまったため、ブドウに付着した水滴をヘリコプターの風圧を利用して吹き飛ばしてみたり、1992年には雨が土壌に染みこまないようにするためにビニールシートで畑を覆ったりと、数多くの驚くべきエピソードが残されているのです。
外部からは、そんな姿を「やや滑稽だ」と捉える方もいるかもしれませんが、どのエピソードも、まずは“ブドウありき”というペトリュスの姿勢をよく表していると思います。
シャトーの歴史
ペトリュスの名前の由来は
ペトリュスの名前の由来ははっきりとは分かっていないが、19世紀頃、当時のオーナーのアルノー家によって名付けられたようだ。当時のラベルには「Ch Petrus-Arnaud」と書かれていた。当時は土地の名前、所有者の名前が付けられることが多く、その名前の意味は、17世紀頃のこの辺りの小部落の名前だったと考えられている。
ラテン語であるペトリュスは、英語ではピーター(Peter)、フランス語ではピエール(Pierre)となり、“石”という意味があると同時に、キリストから天国への扉の鍵を渡された、十二使徒の長である聖ペテロという意味がある。
パリ博覧会で金賞を獲得
ペトリュスの名前が、歴史上に登場したのは1837年のタステ・ロートン社の文献であるが、それ以前からもワインが作られていたと考えられている。
1889年、パリで開催された博覧会で金賞を獲得したことにより、その名が次第に知れ渡るようになった。
当時のオーナーであるアルノー家は、20世紀の初頭、6.5haの畑を所有していたペトリュスを“Societe Civil de Chateau Petrus”という会社組織とした。第一次世界大戦頃には、すでに高級なワインを作り出すシャトーとしてその名前が知れ渡っており、メドックの2級シャトーのワインと同等の価格で取引されていた。
マダム・ルーバからムエックス社に
1925年から、リブルヌの駅前でレストランを経営していたマダム・ルーバがペトリュス株を購入し始め、第二次世界大戦の頃に全ての株を取得し、単独オーナーとなる。ルーバは多大な努力によってワインの品質を高め、その結果メドックの1級並の価格で取引されるようになっていった。
1947年から、ワインの販売をジャン・ピエール・ムエックスに依頼し始め、1949年からは彼に全ての販売を託すようになる。
1961年、マダム・ルーバは死去。彼女は子供がいなかったため、姪であるリリー・ラコストと甥であるロベール・リナックにペトリュスは引き継がれる。
1964年、ロベールは彼の持分であった株式(全体の49%)をジャン・フランソワ・ムエックスへと売却する。同年には、醸造家として有名なジャン・クロード・ベルエがムエックス社に入り、ペトリュスのワインを造り始めた。
1969年、リリーが所有していた全体の51%に当たる株式は、ムエックス社に売却される。しかしこの際に、ペトリュスの不動産はジャン・フランソワの手に渡りましたが、51%分の使用収益権は彼女の手元に残していた。
この年、隣接するシャトー【ガザン】から6.5haのブドウ畑を購入し、合計11.5haまで畑を拡大した。
2001年、リリーは51%分の使用収益権もムエックス社とへ売却し、ムエックス社がペトリュスの完全な単独オーナーとなり、今日に至っている。
シャトーデータ
主要データ
- Ch Petrus
シャトー・ペトリュス 1 , rue Petrus-Arnaud , 33500 Pomerol - URLなし
- 格付け
- なし
- アペラシヨン
- Pomerol
- 総責任者
- Christian Moueix

畑について
畑面積 | 11.5ha |
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年間平均生産量 | 約3.5万本 |
作付け割合 | メルロー 95% カベルネ・フラン 5% |
平均樹齢 | 約35年 |
植樹密度 | 約5,500本 |
醸造ついて
タンクの種類 | コンクリートタンク |
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樽熟成の期間 | 約21ヶ月 |
新樽比率 | 約50~100%の新樽 |