シャトー案内

Ch Beausejour Becot
シャトー・ボーセジュール・ベコ
生産地 | サンテミリオン地区 |
---|---|
シャトー | シャトー・ボーセジュール・ベコ |
タイプ | 赤/フルボディ/しなやかで肉づきのよいフルボディのワイン |
格付け | サンテミリオン1級B |
栽培品種 | メルロー70%、カベルネ・フラン24%、カベルネ・ソーヴィニヨン6% |
各ワイン評論家からの評価(★1点/☆0.5点)
ロバート・パーカー (第4版) | ★★★(3点/4点満点中) |
---|---|
ヒュージョンソン (第5版) | ★★★(3点/4点満点中) |
ル・クラスモン (2006年度版) | ★★(2点/3点満点中) |
ゴー・ミヨー (2006年度版) | ★★★★(4点/5点満点中) |
上質なブドウを生み出すことで知られている“サンテミリオンの丘”の上という素晴らしい場所にブドウ畑を所有する1級シャトー、シャトー・ボーセジュール・ベコ。80年代半ばからワインの品質が大幅に向上し、現在では「他のサンテミリオン1級シャトーと比較しても上位に入る」と評されるほど、実力をつけてきています。
ボーセジュール・ベコのワインは「しっかりとした果実味があり、色が濃く、凝縮感がある」という評価を受けています。若いビンテージも良いですが、ぜひオールドビンテージでもその実力を堪能してみてください。
シャトー紹介・醸造工程
「1級格下げ」事件の真相は?
- ボーセジュール・ベコのシャトー
サンテミリオン村から【クロ・フルテ】や【カノン】の畑を廻っていくと、まだ真新しいシャトー・ボーセジュール・ベコの醸造所が見えてきます。建物はとてもキレイな白壁で、通りがかった人からもよく見えるように外壁には大きく名前が書かれているため、とても目立っています。
このシャトーは“サンテミリオンの丘”のほぼ頂点にあり、ここからの景色は最高です。眼下には一面にブドウ畑が広がり、奥には“アントル・ド・メールの丘”までを見渡すことが出来ます。広いボルドーの中でも最も眺めの良い場所で、私も個人的に一番好きな景色です。
ボーセジュール・ベコが所有するブドウ畑は、合計「16ha」。シャトーを取り巻くように広がっており、サンテミリオン地区では比較的規模が大きい方でしょう。
このボーセジュール・ベコ、実は1986年に「1級格下げ」という処分を受けたことがあります。以前にシャトーを訪問した際に、前オーナーのミッシェル・ベコさん(現在は二人の息子さんが跡を継いでいます)が案内してくれたことがあり、この時の事情を伺ったことがありました。
1979年、ミッシェルさんはボーセジュール・ベコの隣にあったシャトー・トワ・ムーランを買収し、シャトーの規模を拡大させました。生産量が増えたことに対し、周りのシャトーのオーナー達が嫉妬をして、「1級シャトーのボーセジュール・ベコの畑から採れたブドウと、1級ではないトワ・ムーランの畑から採れたブドウを、同じ醸造所で醸造するのは違反だ!」という適当な理由によって、まんまと格下げへと追い込まれてしまったのだそうです。
本当のところはどうなのか、もちろんこちらには分かりません。しかし、彼にとっては苦い思い出となっているはずのこんなエピソードを、冗談を交えながら語ってくれたのでした。
- シャトーから見たサンテミリオン村の眺め
- シャトーのすぐ前に植えられているカベルネ・フラン
- 案内してくれたマイケルさんとの試飲風景です
- 畑からみた景色。眼下にサンテミリオンのブドウ畑が広がる、とても眺めの良いところです
- これはブドウの色が変わる「ベレゾン」と呼ばれる時期に撮った一枚です
- 前オーナーのミッシェル・ベコさん。後ろにサンテミリオンの村が見えています
樹齢が高めのブドウが揃う
ボーセジュール・ベコの畑で植えられているブドウ品種は、70%がメルロー、25%がカベルネ・フラン、6%がカベルネ・ソーヴィニヨン。樹齢は「約37年」と比較的高めです。収穫は全て手摘みで行われていて、除梗前に2回、除梗後にもう1度選果を行って、ステンレスタンクの中で醸造が行われます。
まず、低温マセレーションを3日間ほど行った後、アルコール発酵を開始させるために温度を上げていきます。発酵中は約28~32℃の温度を保ち、約1週間。その後、約2週間の果皮浸漬を行います。そして、通常は全て新樽の中に入れられてマロラクティック発酵を行っていきます(ビンテージによっては新樽の比率を80%まで下げる場合もありますが、これは稀なことだそうです)。
樽貯蔵室は醸造所の地下にあります。比較的温度は一定に保たれているそうですが、ここには空調設備が無いため、去年でも樽によっては1年経ってもマロラクティック発酵が終わっていないものもあったのだとか。
樽熟成の期間は、合計で約16~18ヶ月間。その間、澱引きは3ヶ月に1度行いますが、現在ではコラージュは行っていません。瓶詰め直前に軽く濾過をしてから瓶詰めとなります。
- 醸造はステンレスタンクで行われます
- 醸造中の発酵タンク室の様子
- とても清潔な樽貯蔵室
- 醸造中は、ホワイトボードに全てのタンクの朝夕の温度、天候、作業内容などが記されます
- こちらは以前に使用していたコンクリートタンク
- 果皮浸漬中には、こうして毎日試飲をして、その期間を決定していくのだそうです
売れ残りも多かった1986年でしたが…
“サンテミリオンの丘”の上にある他のシャトーと同じように、このシャトーにも石切り場の跡を利用したカーブがあり、見学させてもらうことが出来ます。
圧巻だったのは、入り口付近の壁一面に積み重ねられた1986年のビンテージ。これはまさに格下げになった年のもので、その影響もあって、品質は高かったにも関わらず、数多くの売れ残りも発生してしまったのだそうです。
しかし、2006年の秋にこのシャトーを再訪問してみると、この壁一面のワインが全て無くなっていました。その日に案内してくれたマイケルさんの話によると、ほんの数日前に中国人バイヤーがシャトーを訪れて、ストックされていた6,000本(!)を全て買い占めていったのだそうです。さすがは中国パワー、ととても驚かされました。
- 石切り場の跡を利用したカーブ。ずらっと並んでいたのが1986年のボーセジュール・ベコでしたが…
- ここと【カノン】の間に墓地があるため、この辺りの地下では人骨がよく見つかるのだとか
- そのためか、カーブの中にミッシェルさん作の祭壇が造られています
最近、特に評価が高まった注目シャトー
- 樽に焼印されたボーセジュール・ベコの名前
シャトー・ボーセジュール・ベコでは、有名コンサルタントのミッシェル・ロラン氏のコンサルタントチームの一人であるジャン・フィリップ・フォール氏を招聘し、サンテミリオン地区の1級シャトーの中でも、最近になって特に評価が高まってきているシャトーです。
しかし、最近の高評価にばかり注目が集まりがちですが、実はこのシャトーの品質向上は80年代半ばから続いていました。最近になってそれが広く認知されるようになってきただけのことでもあり、これからも質の高いワインを作り続けてくれることは間違いないでしょう。
最後に、全くの余談になりますが、シャトー名の最後の「ベコ」とは、フランス語で“ほっぺたにするような軽いキス”を表す言葉です。これはミッシェルさんの得意とするところで、女性の訪問客があるといつも冗談半分でほっぺたにキスをしてきますので、日本からいらっしゃった皆さん、どうぞ驚かないように心の準備をしておいてください(笑)!!
- 新しく作られた試飲ルーム。とても明るいスペースです
- ここでは見学者のためにワインやグッズを販売しています
- オーナーのプライベートセラー。最も古いのは1854年のオーゾンヌ!!
シャトーの歴史
2つに分割されたシャトー
ボーセジュールの歴史は非常に古く、ガロ・ロマン時代にはすでにブドウが植えられていた。その後、近くにあるサンマルタン教会の修道士たちがブドウの栽培とワイン作りを行い、カマルサックの領主であったジェール家に引き継がれていった。
1722年、ジャンヌ・ド・ジェールがカルル・ド・フィジャック家に嫁いだことにより、このブドウ畑はフィジャック家が所有していた【ドメーヌ・ド・ペイククー】の一部になった。
後にシャトーは別な所有者へと渡り、1823年からはピエール・ポラン・デュカルプが管理していた。
1869年、ピエールが他界したことにより、シャトーは2人の息子が引き継いだ。この時を境に、ボーセジュールは2つ分割され、一方がボーセジュール・ベコに(この名称となったのは1971年から)、もう一方が隣接する【ボーセジュール】となった。
1969年になり、1760年から代々このサンテミリオンの土地にブドウ栽培者として生活し、1929年に【ラ・カルト】のオーナーになっていたベコ家が、ボーセジュール・ベコの畑を買い取る。
1979年、シャトー【トワ・ムーラン】の4.5haのブドウ畑を買い取り、現在の規模になった。
1985年、ミッシェル・ベコから二人の息子であるジェラールとドミニックにシャトーは引き継がれ、現在に至っている。
シャトーデータ
主要データ
- Ch Beausejour Becot
シャトー・ボーセジュール・ベコ 33330 Saint-Emilion - http://www.beausejour-becot.com/
- 格付け
- サンテミリオン1級B
- アペラシヨン
- Saint-Emilion
- 総責任者
- M. Gerard & Dominique Becot

畑について
畑面積 | 16ha |
---|---|
年間平均生産量 | 約6万本 |
作付け割合 | メルロー 70% カベルネ・フラン 24% カベルネ・ソーヴィニヨン 6% |
平均樹齢 | 約37年 |
植樹密度 | 約6,200本 |
醸造ついて
タンクの種類 | ステンレスタンク |
---|---|
樽熟成の期間 | 約16~18ヶ月 |
新樽比率 | 約80~100%の新樽 |