シャトー案内

Ch Lynch-Bages
シャトー・ランシュ・バージュ
生産地 | メドック地区 ポイヤック |
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シャトー | シャトー・ランシュ・バージュ |
タイプ | 赤/フルボディ/凝縮した果実味 |
格付け | メドック5級 |
栽培品種 | カベルネ・ソーヴィ二ヨン73%、メルロー15%、カベルネフラン10%、プティヴェルド2% |
各ワイン評論家からの評価(★1点/☆0.5点)
ロバート・パーカー (第4版) | ★★★★(4点/4点満点中) |
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ヒュージョンソン (第5版) | ★★★★(4点/4点満点中) |
ル・クラスモン (2006年度版) | ★★(2点/3点満点中) |
ゴー・ミヨー (2006年度版) | ★★★★☆(4.5点/5点満点中) |
格付けこそ5級とされていますが、現在では“2級の品質に相当する”という高い評価を受けているのがシャトー・ランシュ・バージュです。
その高評価は決して最近に始まったことではありません。“バージュの丘”と呼ばれるポイヤックでも最良のブドウが採れる土地に畑があり、出来の良いカベルネ・ソーヴィニヨンが収穫されることは古くから知られていました。
そのワインは非常に凝縮され、ミネラル分が豊かであり、スパイシーな香りが特徴的。若いうちからタンニンもまろやかで、口当たりが良く、エレガントさも感じさせてくれます。
“典型的な長期熟成型のワイン”と評されているランシュ・バージュ。5級という格付けであっても、その実力は決して侮ることは出来ません。格付けを遥かに超えた味わいをお楽しみいただけることでしょう。
シャトー紹介・醸造工程
メドック最良の地域の一つ
- シャトーの入り口部分です
メドックで最も有名なアペラシヨンと言えば、5つの1級シャトーのうちの3つが集中しているポイヤックでしょう。その中でも、良いワインが出来るとされているブドウ畑は、大別して3地域あります。
一つは、ポイヤック最南端のサンジュリアンとポイヤックの境界線の一帯。3地域の中で最もジロンド川に近く、【ラトゥール】【ピション・ロングヴィル・バロン】などがある地域です。
もう一つは、ポイヤック最北端の、サンテステフとポイヤック境界線の一帯。3地域の中では最も海抜が高く、ちょうど小高い丘を形成しています。ここには【ラフィット・ロートシルト】【ムートン・ロートシルト】といったシャトーがあります。
そして、最後の一つが、5級シャトーのランシュ・バージュを頂点としてその周りに広がっている、通称“バージュの丘(プラトー・ド・バージュ)”と呼ばれるところです。
“バージュの丘”の頂点に
- シャトー北西部の区画。砂利が多く、斜面になっているのが分かります。正面にシャトーが見えます
- シャトー北東部の区画。正面にポイヤック村、ジロンド川が見え、そちらに向かって傾斜しています
D2号線を、ラトゥール、ピションロングヴィル・バロンなどを通り過ぎて北上していくと、ランシュ・バージュが所有する4つ星ホテル「シャトー・コルディアンバージュ」が見えてきます。そこからラトゥールの辺りほどの傾斜ではありませんが、自転車で上るのが疲れるぐらいの斜面が始まって、ランシュ・バージュを過ぎた辺りから、今度はポイヤック村に向かって下っていくのです。
実際にランシュ・バージュのシャトーの前に立ってみると、その傾斜、海抜の高さが実感できるでしょう。東にはジロンド川、北東にはその昔ワインの積み出しで栄えたポイヤック村が眼下に広がります。そして北西には、ランシュ・バージュとセカンドワインである「オー・バージュ・アベルス」の畑が斜面となって北側へ下っていて、道路を過ぎるとまたムートンなどのポイヤック北側にあるシャトーに向かって上りの斜面となっていくのです。
ちょうどこの地域は、ジロンド川によってもたらされた砂利が堆積している、非常に水はけの良い場所です。ランシュ・バージュが所有する「90ha」のブドウ畑は、このようにポイヤックを代表するような絶好のロケーションにあるのです。
細部にわたって徹底した管理が
- 除梗機の下部に破砕機がある、一体型のタイプ
- 樽貯蔵室です
ランシュ・バージュのブドウ畑では、カベルネ・ソーヴィニヨンが73%、メルローが15%、カベルネ・フランが10%、プティベルドが2%植えられています。
収穫は全て手摘み、選果はブドウ畑の中で行います。醸造所に運んできた後は、除梗・破砕をしてから、タンクの中にポンプを使ってブドウの粒を搬入するという、【ラフィット】と同じ方法を取っています。
醸造は、合計33基あるステンレスタンクの中で行い、ほぼ28~30℃の温度でアルコール発酵の後、果皮浸漬を行います。アルコール発酵開始から果皮浸漬終了までは、大体20日~30日と、こちらもごく一般的な数値です。
その後、ワインを一旦地下にあるタンクに移し、ワインの中に残っている粕を取り除いてからタンクへ戻し、マロラクティック発酵を行います。しかし、全てのワインをこのように行うのではなく、全体の30%は新樽の中でマロラクティック発酵を行うのだそうです。
何故30%だけなのか、その理由を伺ってみると、「マロラクティック発酵をタンクで行ってから樽に入れたのでは、最終的にワインについているであろう樽香が、4月に行われるプリムールの試飲の際に間に合いません。正確な判断をしてもらうために、プリムール用のワインに早く樽香を付けるために、樽の中でマロラクティック発酵を行うのです。」とのことでした。
通常、9月に収穫されたブドウは、約2年間はシャトーの中で醸造・熟成を続け、2年後の11月頃から出荷が始まります。その間、約18ヶ月間ほど樽の中で熟成を行うため、最終的には樽香がしっかり付くものです。
しかし、1年目の4月には、まだ熟成中の状態で業者向けの“プリムール”と呼ばれる試飲会が行われて、ワインが先行予約販売されます。まだ樽に入れて間もない時期ですから、樽香がしっかり付いておらず、本来の味わいとかけ離れた印象を与えてしまう可能性もあります。このため近年、多くのシャトーで、一部または全てのワインのマロラクティック発酵を樽の中で行い、樽香を早めにつけておくという方法が採用されてきているのです。
マロラクティック発酵が終わった後は、ブレンドが行われます。ブレンドされたワインは樽に入れられて、合計12~15ヶ月間の熟成に入ります。使用している樽は、9社~12社からと比較的多めのメーカーから購入しており、全てフレンチオーク製で、焼付けはミディアムに統一しているそうです。
澱引きも、伝統的に3ヶ月に1回行い、熟成が終了した後、一旦すべてのワインをタンクに戻して、そこで粉末卵白でコラージュを行います。そして、格付け上位のシャトーなどと同様に、自社で所有する機械を使って瓶詰めを行うなど、最後まで徹底した管理を行っているのです。
- 細長いステンレスタンクは白用。合計5基あります
- こちらは赤用のステンレスタンクです
- 訪問者のための試飲ルームです
- セカンドワインの樽貯蔵室。狭くて室温を上げやすいので、樽でマロラクティック発酵を行う際にはここで行います
- シャトー内にはこんなステンレスパイプが張り巡らされていて、この中をワインが移動します
- 自社所有の瓶詰めの機械
5級ながらも“その品質は2級並”
- 自社所有の瓶詰めの機械
ランシュ・バージュは、1855年の格付けでは5級とされましたが、現在では“その品質は2級並”とも言われています。ポイヤックの中でも優れた地域にブドウ畑を所有しているのですから、それだけの高い評価を受けるのも当然のことかもしれません。
また、このシャトーでは、【マルゴー】や【ムートン・ロートシルト】などと同様に、ごく少量ですが白ワインも作っています。4.5haの畑にはセミヨン40%、ソーヴィヨン・ブラン45%、ミュスカデル15%が植えられており、希少価値もあって大変人気が高くなっています。
- プライベートカーブ。中央にあるのは現代アートが好きな現オーナーが気に入っている作品だとか
- 79年まで使用していた木製の発酵タンク。敷地が広いので、取り壊さずに展示用として残してあります
- これも昔使っていた道具で、「瓶詰め前に使用する濾過機」なのだそうです
シャトーの歴史
16世紀から今と同じ広さで存在
ランシュ・バージュは、ジロンドの主要な河口で美しい低地に位置する土地で、その名前はバージュの古い小さな集落の名に由来している。
ドメーヌは、16世紀から今と同じ広さで存在していた。納税の記録以外では、最も古いものは18世紀はじめで、仲買人のベルナール・ドゥジャンから、騎士でもありまたギュイエンヌの財政部長でもあったピエール・ドゥルイヤールがシャトーを購入した記録が残っている。
彼の娘エリザベスは、アイルランドからボルドーへの移民で、すでに裕福な仲買人となっていたジョン・ランシュ・ドゥ・ガルウェイの息子トーマス・ランシュと結婚する。1749年、ピエールの死後、バージュの敷地は自然とエリザベスとトマ・ランシュのものとなった。
名オーナーが評価を高める
30年後の1779年、彼らの息子ジャン・バティストが結婚する際に、この敷地は息子に贈与された。ジャン・バティスト・ランシュは、ルイ16世によって貴族の爵位を与えられ、一時は投獄されるなどしながらも、1810年に伯爵になり、ルイ18世のもとで封建大貴族となる。また、さらに1809年にはジロンド県会会長とボルドー市長にも選ばれている。
余りの多忙のため、彼はポイヤックのブドウ栽培を念入りに監視することが叶わず、弟の騎士ミッシェル・ランシュがシャトーを所有することとなる。そして1824年、彼はジュネーブのワイン仲買人で近年ボルドーへ移住したセバスチャン・ジュリンに所有者が移るまでシャトーの管理を行った。彼らの一族の管理のもと、1855年、ランシュ・バージュは5級シャトーに格付けされた。
その後、オーナーは何度か変わり、1934年ジャン・シャルル・カーズが所有するようになる。彼はメドックでもワイン製造に定評のある人物で、サンテステフのシャトー・レ・ゾルム・ドゥ・ペズの所有者でもあった。彼は35年間にわたってワイン栽培に力を注ぎ、ランシュ・バージュの評価を大きく高めていった。
1972年、95歳で亡くなった彼の後を、息子アンドレ・カーズ(1947-1991年までポイヤック市長)と孫のジャン・ミッシェル・カーズが相続し、現在に至っている。
シャトーデータ
主要データ
- Ch Lynch-Bages
シャトー・ランシュ・バージュ 33250 Pauillac - http://www.lynchbages.com/
- 格付け
- メドック5級
- アペラシヨン
- Pauillac
- 総責任者
- Jean-Michel Cazes

畑について
畑面積 | 90ha |
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年間平均生産量 | 約42万本 |
作付け割合 | カベルネ・ソーヴィ二ヨン 73% メルロー 15% カベルネフラン 10% プティヴェルド 2% |
平均樹齢 | 約30年 |
植樹密度 | 約9,000本 |
醸造ついて
タンクの種類 | ステンレスタンク |
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樽熟成の期間 | 約12~15ヶ月 |
新樽比率 | 約60%の新樽 |