シャトー案内

Ch La Lagune
シャトー・ラ・ラギューヌ
生産地 | メドック地区 オーメドック |
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シャトー | シャトー・ラ・ラギューヌ |
タイプ | 赤/ミディアムボディ/フルーティで軽やか |
格付け | メドック3級 |
栽培品種 | カベルネ・ソーヴィ二ヨン50%、メルロー35%、プティヴェルド15% |
各ワイン評論家からの評価(★1点/☆0.5点)
ロバート・パーカー (第4版) | ★★(2点/4点満点中) |
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ヒュージョンソン (第5版) | ★★★(3点/4点満点中) |
ル・クラスモン (2006年度版) | 評価なし |
ゴー・ミヨー (2006年度版) | ★★★☆(3.5点/5点満点中) |
メドック地区の入り口部分にあるシャトー・ラ・ラギューヌは、メドックの中でも最もボルドーに近い場所に位置しています。畑が砂礫と軽い砂利で構成されていることから、非常に“グラーブ的なワイン”だと評されることも多くなります。しかし、評論家によっては、“ポムロール的”とも“ブルゴーニュ的”とも評価していたりして、飲み手によって色々な特徴を感じるワインです。
1958年まではシャトーは荒れ果てていて、「3級の位置に戻すのは困難だろう」と言われていた時期もありました。しかし、同年にシャトーを購入したジョルジュ・ブリュネ氏という一人の起業家によって、シャトーは完全に生まれ変わり、その品質は飛躍的に回復したことでも有名となりました。その後、オーナーは代わったものの、その品質は落ちることなく向上を続けています。
ラギューヌのワインは、とても力強く、リッチで肉付きの良く、ブラックチェリーの香りが特徴的。現在、若い女性醸造家であるカロリン・フレイさんとそのスタッフの手によって、さらなる品質向上に向けての努力が続けられています。
シャトー紹介・醸造工程
近代的な設備が大きな話題に
- シャトー(城館)と、1958年に建て直された以前の醸造設備
マルゴー、サンジュリアン、ポイヤック、サンテステフといった、メドックの有名な産地の間を縫うように南北へ通っているのが、“シャトー街道”ことD2号線です。この通りをボルドーから北上して行き、オーメドック地域の入り口部分にあるのが、3級シャトーのラ・ラギューヌです。
2004年度のプリムール(先物販売 の意)の際には、ラ・ラギューヌの改装されたばかりの超近代的な醸造設備が話題となり、一躍このシャトーの知名度を上げていました。しかし、ブドウ畑の中でも、同じぐらいの革新的な改革が行われていたのです。
その主役となったのは、シャトーの株主の一人であり、また醸造家でもあるカロリンヌ・フレイさん。そしてもう一人、彼と同時にコンサルタントとして招かれたドニ・デブルディユー氏です。
彼女は、ボルドー大学の教授として、また白ワインの権威としても有名なドニ・デブルディユー氏のチームの一人として実際に醸造を行っていました。
2004年からラギューヌのワインを手がけることになった彼女は、まずは良いブドウを作ることが最も重要と考え、ブドウ畑の排水工事を行い、「リュットレゾネ(減農薬栽培)」へ取り組み、ブドウの樹の高さを20センチ引き上げ(これにより葉が多く付き、光合成が促進されます)を行うなど、次々と畑の改革へと取り組み始めたのです。
プティ・ヴェルドに力を入れる
- シャトー南側にあるやや平坦な区画。ここも植え替えが行われたばかりです
また、合計「72ha(現在80haのうち8haは植え替え中のため)」あるブドウ畑の地質調査を行い、栽培品種の植え替えも行いました。品種との相性をつぶさに見ていった結果、それまで植えていたカベルネ・フランをすべて取り除いたのです。
さらに、2005年にはカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローを合計5ha植え替え、2006年には約1.6haのプティ・ヴェルドを、以前カベルネ・フランが植えられていた区画に植えるのだそうです。ワインにより濃い色調とスパイシーなアロマをもたらすプティ・ヴェルドは、砂礫と軽い砂利質で構成されるラギューヌのブドウ畑とは非常に相性が良いとのことで、現在では畑の15%にも達するのだとか。
プティ・ヴェルド以外では、カベルネ・ソーヴィ二ヨンが50%、メルローが35%植えられており、ワインはこの3品種でブレンドされています。
最近では、距離的に近い位置にあるマルゴー地区でも、このプティ・ヴェルドという品種の割合を増やすところが増え始めています。しかし、15%という数字は、他のシャトーと比較しても明らかに高い数字になっています。この品種をブレンドに多めに加えることで、より明確にシャトーの個性を出そうという狙いがあるのだそうです。
大きな期待を寄せているだけに、ただ植え替えを行うだけではなく、クローンは使わずに、手間はかかるがテロワールの特徴がより強く出る言われている“マッサル選抜(マッサル・セレクション)”のものを使用します。
これは、クローンのように母株と同じ長所、短所を持つブドウの樹を増やしていくのではなく、畑に実際に植えられているブドウの樹から良い樹を選び、穂木として台木に繋ぐ方法です。穂木によって遺伝子が異なるため、同じ長所、短所にはなりませんが、より良いブドウの樹に成長していきます。
今年植え替え予定の1.6haの畑には、この方法で生まれたプティ・ヴェルドを畑に植える予定にしているのだそうです。
- これは北側の区画。奥に見える建物が醸造所になります
- 南側の区画よりも砂利は多め。盛り土ではなく、あえて雑草を残して木を寒さから守っています
- 植え替えが行われたばかりのカベルネ・ソーヴィ二ヨンの区画です
醸造は至って伝統的に
- 後ろのガラス張りの所がエレベーター。上がってきたブドウはこの選果台で2回の選果が行われます
- ベルトコンベア式のエレベーターで除梗機まで上げ、さらに3番目の選果台へブドウが移ります
また2004年からは、手摘みで収穫されたブドウを、20kg入りのカジェットに入れて醸造所まで運ぶ方法も採用しました。これは、現在有名シャトーの多くが取り入れているやり方で、これによって輸送中の果汁のロスや病気の発生を防ぐことが出来るのです。
カジェットで運ばれたブドウは、合計2つあるエレベーターで2階部分へと上げられます。そこで、除梗前に2回(通常は1回の場合がほとんど)の選果を選果台の上で行い、除梗後にもさらに1回、合計3回も念入りな選果を行っています。
その後、ブドウの粒の破砕を行い、ステンレスの特殊なパイプを使って、半円形に設置された合計72基のステンレスタンクの中へと、重力によって運ばれていきます。
ラギューヌの醸造は至って伝統的な方法をとっていますが、最大の特徴は“酵母添加をしない”ということでしょう。大きなシャトーになるほどリスクを回避するために酵母添加を行っているケースが多くなりますが、ラギューヌではあくまで自然な形にこだわるということで、野生酵母のみで発酵を行っています。
まずは、約12℃での低温マセレーションを3日間行います(カベルネ・ソーヴィニヨンに関してはこれをしない場合もあります)。その後アルコール発酵、果皮浸漬が終了すると、フリーランジュースはタンクの中で、プレスジュースは樽の中(一部新樽も使用する)でマロラクティック発酵を行っていきます。
その後、ミディアムとミディアム・プラスで焼付けを行った、約55%(ヴィンテージによっては90%まで達することもあります)のフレンチオークの新樽と、1回使用した旧樽の中で、合計15~18ヶ月間の熟成を行います。3ヶ月に1度の澱引き、卵白を使用したコラージュを行い、軽く濾過をした後、ようやく瓶詰めとなります。
- 除梗されたブドウの粒は少しだけ破砕し、中央部のステンレスのパイプを伝って、タンクへ移動させられます
- ブドウを移動させるステンレスのパイプ。重力によってブドウが移動できるように5%の傾斜になっています
- 最新の機材ばかりではなく旧型のものも。写真は樽を移動させるためのもので、電動式のシャリオを使用しています
- 樽貯蔵室。以前は2つに分かれていましたが、壁を取り除き一つにしました
- ブドウの移動などの管理を行うコンピューターパネル
- これは瓶詰めの機械です
若い二人が改良に取り組む
- 2006年から新しく醸造責任者となったジェロームさん
- 樽からサンプルを取るジェロームさん。ここには実験用の様々な樽が並び、熟成を行っています
ラ・ラギューヌは、まずはやはりモダンな醸造設備に目を奪われがちですが、ブドウ畑を重視している点も見逃せません。2006年から新しく醸造責任者となったジェロームさんも畑を重視しており、“ワインの品質の70%は畑で決まる”という考え方を持っているそうです。
この新しい醸造責任者に「今後どんなことを試してみたいか」と伺ってみたところ、“樽に関して色々と試してみたい”ということでした。彼はまだ樽には様々な可能性があると考えていて、すでにフレンチオーク以外のものを試してみたり、新しい樽会社からの樽の購入を開始していたりと、すでにチャレンジは始まっているようです。
醸造家であるカロリン・フレイさんも28歳ととてもお若いのですが、ジェロームさんも見たところ30歳前ぐらいの年齢だと思われます。今後、この若い二人がどのようにして我々を驚かしてくれるのか、楽しみにしておきたいと思います。
シャトーの歴史
小さな水場の周りで歴史が始まる
ラ・ラギューヌのある一帯は、もともとガスコーニュの方言で“水場”や“小さい池”を意味する「ラギュ」という名前で呼ばれていた。15世紀末、この水場の周りでシャトー・ラ・ラギューヌの歴史が始まる。その当時は、まだ住居、納屋、中庭、庭などを作りながら小さな集落にしていくという開拓の段階だった。
18世紀になりワイン栽培を開始、1730年には邸宅も建てられた。この頃は政治的・経済的な理由から、次々と所有者が変わっていた時代となる。
1850年には、シャルル・クックが「ボルドー・エ・セ・ヴァン」の初版で、ラ・ラギューヌを3級に格付けした。1855年の格付けでは、これが公式のものとなる。
1886年、ボルドー全体がブドウの害虫「フィロキセラ」による被害に遭い、経済的な危機に直面する。しかし、そんな時にも関わらず、仲買人のセーズ氏がシャトーを購入し、大損害を被ったシャトーを元の地位にまで回復させた。世界中からの賞賛を受けながら、セーズ家はこれから1世紀半にわたって、シャトーを所有し続けた。
しかし第2次世界大戦後、敷地は数十haごとに分割され、非常に困難な状態に陥ってしまう。セーズ家は、シャトーの規模は縮小してしまったものの、かつての名声を守るために再興を図ったのだが、1956年の霜の害によって、ついに再建を諦めざるを得なくなった。
デュセイエ家による建て直し
ジョルジュ・ブルネが農地再開発に取り組むことになったが、1961年に辞任。
そんな時、シャンパーニュ地方のネゴシアンで、アヤラ・モンテベロ社のオーナーのルネ・シャイヨーが、ボルドー地区のシャトーの購入を検討しており、ラ・ラギューヌの所有者となった。事前に、彼が最も信頼していた協力者ジャン・ミッシェル・デュセイエがこの地に来て、ラ・ラギューヌの土地を高く評価したためだった。彼は商談、敷地の管理(ブドウ畑の整理統合、設備や建物の改修)の責任者となり、シャトーに大きな成功をもたらした。
ルネ・シャイユーには相続人がいなかったため、ジャン・ミッシェル・デュセイエが包括受遺者となり、1979年シャトーの所有者となる。
1998年、彼は20年来補佐してくれた息子アランに所有権を譲る。アランは、アヤラ・モンテベロ社のオーナーにもなり、今なおラ・ラギューヌの運営に力を注ぎ続けている。
シャトーデータ
主要データ
- Ch La Lagune
シャトー・ラ・ラギューヌ 33290 Ludon-Medoc - http://www.chateau-lalagune.com/
- 格付け
- メドック3級
- アペラシヨン
- Haut-Medoc
- 総責任者
- Caroline Frey

畑について
畑面積 | 80ha |
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年間平均生産量 | 約45万本 |
作付け割合 | カベルネ・ソーヴィ二ヨン 50% メルロー 35% プティヴェルド 15% |
平均樹齢 | 約25年 |
植樹密度 | 約6,666本 |
醸造ついて
タンクの種類 | ステンレスタンク |
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樽熟成の期間 | 約18ヶ月 |
新樽比率 | 約55%の新樽 |